第110回
問102
理論問題|化学
アルキンの反応と主生成物の判定
問102(理論)
以下の反応式のうち、右に示された主生成物が誤っているのはどれか。1つ選べ。ただし、各反応はそれぞれ適切な溶媒を用いて行い、反応終了後、適切な後処理を施したものとする。
1
—
2
—
3
—
4
—
5
—
正解です!
解説でアルキンの各種反応を確認しましょう。
不正解です。正解は 4 です。
解説でアルキンの各種反応を確認しましょう。
解説を見る▼
選択肢4は、内部アルキン(3-ヘプチン)をリンドラー触媒(Pd/CaCO₃、キノリン被毒)で水素化する反応です。リンドラー触媒による接触水素化はsyn付加(同じ面から水素が付加)となるため、生成物はシス(Z)アルケンになります。しかし選択肢4に示された生成物は、2つのエチル基が二重結合を挟んで対角線上(互いに逆側)に配置されたトランス(E)アルケンとして描かれており、誤りです。
アルキンへの水素化反応と立体化学
・リンドラー触媒(Pd/CaCO₃、キノリン):syn付加によりシス(Z)アルケンを与える(触媒毒により反応を一段階で停止)
・Na/液体アンモニア(Birch還元型):anti付加によりトランス(E)アルケンを与える(本問では登場しないが対比として重要)
・骨格式(ジグザグ)でシス体は二重結合の同じ側に2つの置換基、トランス体は対角線上(逆側)に2つの置換基が描かれる
・リンドラー触媒(Pd/CaCO₃、キノリン):syn付加によりシス(Z)アルケンを与える(触媒毒により反応を一段階で停止)
・Na/液体アンモニア(Birch還元型):anti付加によりトランス(E)アルケンを与える(本問では登場しないが対比として重要)
・骨格式(ジグザグ)でシス体は二重結合の同じ側に2つの置換基、トランス体は対角線上(逆側)に2つの置換基が描かれる
各選択肢の解説
◯ 1 末端アルキンのアルキル化:NaNH₂(強塩基)が末端アルキンの酸性水素(sp炭素上のH)を脱プロトン化してアセチリドイオンを生成し、CH₃CH₂Brと求核置換反応(SN2)を起こして内部アルキンを与える。正しい
◯ 2 ヒドロホウ素化-酸化:かさ高いジシアミルボラン等を用いた末端アルキンのヒドロホウ素化は、立体障害の少ない末端炭素にホウ素が結合する逆マルコフニコフ付加となり、酸化的処理(H₂O₂・NaOH)でエノールを経てアルデヒドを与える。正しい
◯ 3 水和反応(オキシ水銀化):HgSO₄・H₃O⁺による内部アルキンの水和はマルコフニコフ型でエノールを生成し、互変異性化してケトンを与える。正しい
× 4 リンドラー触媒による水素化:syn付加によりシス(Z)アルケンが生成するはずだが、描かれた生成物はトランス(E)配置になっており誤り
◯ 5 HCl(2当量)の付加:マルコフニコフ則に従い、1当量目のHCl付加でビニルクロリドを経て、2当量目も同じ炭素にマルコフニコフ付加することで、同一炭素上に2つの塩素(ジェミナルジクロリド)を持つ生成物を与える。正しい
◯ 1 末端アルキンのアルキル化:NaNH₂(強塩基)が末端アルキンの酸性水素(sp炭素上のH)を脱プロトン化してアセチリドイオンを生成し、CH₃CH₂Brと求核置換反応(SN2)を起こして内部アルキンを与える。正しい
◯ 2 ヒドロホウ素化-酸化:かさ高いジシアミルボラン等を用いた末端アルキンのヒドロホウ素化は、立体障害の少ない末端炭素にホウ素が結合する逆マルコフニコフ付加となり、酸化的処理(H₂O₂・NaOH)でエノールを経てアルデヒドを与える。正しい
◯ 3 水和反応(オキシ水銀化):HgSO₄・H₃O⁺による内部アルキンの水和はマルコフニコフ型でエノールを生成し、互変異性化してケトンを与える。正しい
× 4 リンドラー触媒による水素化:syn付加によりシス(Z)アルケンが生成するはずだが、描かれた生成物はトランス(E)配置になっており誤り
◯ 5 HCl(2当量)の付加:マルコフニコフ則に従い、1当量目のHCl付加でビニルクロリドを経て、2当量目も同じ炭素にマルコフニコフ付加することで、同一炭素上に2つの塩素(ジェミナルジクロリド)を持つ生成物を与える。正しい
| 選択肢 | 反応 | 正誤 |
| 1 | アセチリドのアルキル化 | 正しい |
| 2 | ヒドロホウ素化-酸化 | 正しい |
| 3 | オキシ水銀化(水和) | 正しい |
| 4 ★ | リンドラー触媒による水素化 | 誤り(Z体のはずがE体で描かれている) |
| 5 | HCl 2当量付加 | 正しい |
引っかけポイント:
・選択肢4:「リンドラー触媒=部分水素化でアルケンが得られる」というところまでは正しく記憶していても、シス(Z)かトランス(E)かという立体化学まで正確に区別できていないと見落としやすい。リンドラー触媒はsyn付加=シス生成物という原則を必ず押さえること
・骨格式での立体配置の見分け方:二重結合を挟んで同じ側(同じ上下位置)に主鎖の続きが描かれていればシス、対角線上(逆の上下位置)に描かれていればトランスという基本ルールで判定する
・選択肢2(かさ高いボランによる逆マルコフニコフ付加)と選択肢3(水銀触媒によるマルコフニコフ付加)は、同じ「アルキンへの水付加関連反応」でも位置選択性が逆になる好対照な組み合わせとして、セットで覚えておくと得点源になる
・選択肢4:「リンドラー触媒=部分水素化でアルケンが得られる」というところまでは正しく記憶していても、シス(Z)かトランス(E)かという立体化学まで正確に区別できていないと見落としやすい。リンドラー触媒はsyn付加=シス生成物という原則を必ず押さえること
・骨格式での立体配置の見分け方:二重結合を挟んで同じ側(同じ上下位置)に主鎖の続きが描かれていればシス、対角線上(逆の上下位置)に描かれていればトランスという基本ルールで判定する
・選択肢2(かさ高いボランによる逆マルコフニコフ付加)と選択肢3(水銀触媒によるマルコフニコフ付加)は、同じ「アルキンへの水付加関連反応」でも位置選択性が逆になる好対照な組み合わせとして、セットで覚えておくと得点源になる
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
アルキンの反応は有機化学の中でも暗記量が多い分野ですが、「触媒・試薬が何を選択的に作るか」という視点で整理すると理解しやすくなります。リンドラー触媒はビタミンAなどの天然物合成における部分水素化のステップとしても使われる、実用上重要な反応です。
立体化学(シス・トランス、R・S)を問う問題は、構造式を丸暗記するのではなく、「なぜその立体配置になるのか」という反応機構(syn付加かanti付加か)から導き出せるようにしておくと、初見の類題にも対応できるようになります。












