【第111回薬剤師国家試験】問224-225 非小細胞肺がん患者への免疫チェックポイントとペムブロリズマブの留意点 解説

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第111回 問224-225
第111回 問224-225
実践問題|生物(224)・実務(225)
非小細胞肺がん患者への免疫チェックポイントとペムブロリズマブの留意点
【症例】問224-225 共通
72歳女性。嗄声が継続していたため近医を受診した。胸部X線検査で右肺腫瘤を指摘され、総合病院呼吸器内科を紹介受診した。精査の結果、cT2N3M1b、Stage ⅣAの非小細胞肺がん(腺がん)と診断された。パフォーマンスステータス(PS)0。EGFR遺伝子変異陰性、ALK遺伝子転座陰性、ROS1遺伝子転座陰性、BRAF遺伝子変異陰性、PD-L1 ≧ 50%。一次治療としてペムブロリズマブが投与されることになった。
問224(生物)
本治療には、腫瘍抗原に対するT細胞の免疫応答と、この免疫応答を調節するための免疫チェックポイントの機能が関わっている。T細胞の免疫応答に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 樹状細胞は、ヘルパーT細胞に腫瘍抗原などの抗原を提示する。
2 T細胞のうち、腫瘍抗原に対する免疫応答を増強する細胞を制御性T細胞とよぶ。
3 抗原提示細胞のCD80/CD86は、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)と結合することによりキラーT細胞の活性化に必要な補助刺激シグナルを伝える。
4 がん細胞のPD-L1は、CD28と結合することによりキラーT細胞の活性化に必要な補助刺激シグナルを伝える。
5 がん細胞のPD-L1は、PD-1と結合することによりキラーT細胞に抑制性のシグナルを伝えて免疫応答を抑える。
正解です!
正答:1・5
×
不正解です
正答:1・5
問225(実務)
この患者へのペムブロリズマブの投与にあたり、病棟担当薬剤師が留意することとして適切なのはどれか。2つ選べ。
1 投与前における制吐剤の予防投与
2 投与前における腎機能に応じた用量の調節
3 治療中の咳、息苦しさなどの症状
4 治療中の甲状腺機能の異常
5 治療中のEGFR遺伝子変異陰性に伴う副作用の増悪
正解です!
正答:3・4
×
不正解です
正答:3・4
解説を見る(問224・225)

■ 問224:T細胞の免疫応答と免疫チェックポイント

💡 抗原提示細胞(樹状細胞)はMHCクラスⅡ分子でヘルパーT細胞に抗原提示、MHCクラスⅠ分子でキラーT細胞に提示。CD80/CD86はCD28と結合して活性化補助シグナルを伝える(CTLA-4と結合すると抑制)。がん細胞のPD-L1はT細胞のPD-1と結合して免疫応答を抑制→ペムブロリズマブはこのPD-1を遮断して抑制を解除する。
選択肢正誤解説
1樹状細胞はプロフェッショナル抗原提示細胞の代表。MHCクラスⅡ分子に抗原ペプチドを提示してヘルパーT細胞(CD4⁺)を活性化する。MHCクラスⅠ分子ではキラーT細胞(CD8⁺)にも提示する。
2×免疫応答を増強するのはエフェクターT細胞(キラーT細胞・ヘルパーT細胞)。制御性T細胞(Treg)は免疫応答を抑制する細胞であり、逆の説明。
3×CD80/CD86がCD28と結合すると活性化補助シグナルとなる。CTLA-4はCD28と同じリガンドに競合的に結合するが、CTLA-4との結合は抑制性シグナルとなり、T細胞活性化を抑制する。
4×がん細胞のPD-L1が結合するのはPD-1(T細胞上)。CD28はCD80/CD86のリガンドであり、PD-L1はCD28と結合しない。
5がん細胞が発現するPD-L1がT細胞のPD-1と結合すると、T細胞に抑制性シグナルが入り免疫応答が減弱する(がんの免疫逃避機構)。ペムブロリズマブはPD-1に結合してこのシグナルを遮断し、抗腫瘍免疫を回復させる。
⚠️ 引っかけポイント(問224):
・選択肢2(制御性T細胞):「制御性」から「免疫を増強する」と誤解しやすいが、正反対の「免疫抑制」細胞。TregはFoxp3を発現し、がん免疫逃避にも関与する。
・選択肢3(CD80/CD86とCTLA-4):CD80/CD86の結合相手はCD28(活性化)とCTLA-4(抑制)の2種類。CTLA-4はCD28より親和性が高く競合し、抑制シグナルを優先させる。
・選択肢4(PD-L1とCD28):PD-L1の結合相手はPD-1(抑制)。CD28の結合相手はCD80/CD86(活性化)。ペアを正確に覚える。

■ 問225:ペムブロリズマブの留意点

💡 ペムブロリズマブ(キイトルーダ)は抗PD-1抗体。免疫関連有害事象(irAE:immune-related Adverse Events)として間質性肺炎(咳・息苦しさ)・甲状腺機能障害・大腸炎・肝障害・皮膚障害・下垂体炎などが重要。用量は体重や腎機能に関係なく固定用量(200 mg/回または400 mg/回)。制吐剤の予防投与は不要(催吐リスクが低い)。EGFRは陰性のため関連副作用なし。
選択肢正誤解説
1×ペムブロリズマブの催吐リスクは低く、制吐剤の予防投与は通常不要。シスプラチン等の高催吐性薬剤と異なる点。
2×ペムブロリズマブは固定用量(200 mg/回 3週ごと、または400 mg/回 6週ごと)で投与する。腎機能・体重による用量調節は不要。
3免疫関連有害事象(irAE)として間質性肺炎が重要。咳・息苦しさ・発熱などの症状が現れた場合は速やかに報告・受診するよう指導する。肺がん患者でもともと呼吸器症状があるため特に注意が必要。
4irAEとして甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症・亢進症)が比較的高頻度に発生する。無症状で進行することもあるため、定期的なTSH・FT4のモニタリングが必要。
5×本症例はEGFR遺伝子変異陰性のため、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(ゲフィチニブ等)は適応外。EGFR変異陰性に「伴う副作用」という概念も不適切。
⚠️ 引っかけポイント(問225):
・選択肢1(制吐剤の予防投与):ペムブロリズマブは催吐リスクが低く、制吐剤の予防投与は不要。シスプラチン等の高催吐性薬剤と混同しない。
・選択肢2(腎機能用量調節):抗体製剤は分子量が大きく腎糸球体でろ過されないため、腎機能による用量調節は不要。固定用量で投与する。
・選択肢5(EGFR変異陰性に伴う副作用):EGFR陰性だからこそペムブロリズマブが選ばれた経緯がある。「陰性に伴う副作用増悪」という概念は存在しない。
臨床メモ
あおい
薬剤師 あおい

ペムブロリズマブ(キイトルーダ)のirAE(免疫関連有害事象)は多臓器に及びます。免疫チェックポイントが遮断されることで、本来は抑制されていた自己免疫反応が各臓器で起こる副作用です。特に頻度が高く重要なものを覚えておきましょう。

間質性肺炎:咳・息切れ・発熱。肺がん患者は元々呼吸器症状があるため、変化を見逃さないことが重要。
甲状腺機能障害:無症状で進行することが多く、定期的なTSH・FT4測定が必須。
大腸炎:下痢・腹痛・血便。
肝障害:AST・ALT上昇。
皮膚障害:発疹・かゆみ。
下垂体炎:倦怠感・頭痛・視野障害。

irAEの特徴は「免疫が過剰になって自分自身の臓器を攻撃する」こと。治療はステロイドによる免疫抑制が基本です。患者さんには「いつもと違う症状があれば必ず報告してください」と伝えることが重要です。

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