82歳女性。身長157 cm、体重40 kg。大腸がんの治療で入院していたが、食事を摂ることができなくなり中心静脈栄養(TPN:Total Parenteral Nutrition)療法を開始した。退院後も自宅で皮下埋込型中心静脈ポート(CVポート)から投与するTPN療法を継続することとなった。地域のケアマネジャーと相談し、新たに介護保険を利用することとなり認定を受けた。自宅における患者の点滴は、CVポートに接続されたフーバー針(皮下埋込式カテーテル用穿刺針)を介して投与される。
退院後は処方1及び処方2の薬剤で治療することとなり、薬局の薬剤師が患者宅を訪問して薬剤管理指導を行うこととなった。
| (処方1) |
エルネオパNF2号輸液(注)(1,500 mL/袋) 1袋 1日1回 24時間かけて点滴静注 14日分 |
| (処方2) |
静注用脂肪乳剤輸液20%(250 mL/袋) 1袋 1日1回 4時間かけて点滴静注 月曜、木曜に投与 4日分(投与実日数) |
(注:高カロリー輸液用アミノ酸・糖・電解質・総合ビタミン・微量元素液で、1袋1,500 mL中に総遊離アミノ酸45 g、ブドウ糖262.5 g、電解質、総合ビタミン、微量元素などを含む総熱量1,230 kcalの製剤)
【問322】在宅TPN・CVポート管理の指導
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 処方1を冷蔵庫保管 | × エルネオパNF2号輸液のような高カロリー輸液(キット製剤)は室温保存が基本。冷蔵庫保管は不要であり、また配合変化や析出のリスクを避けるため添付文書の保存条件に従う。「変質を防ぐため冷蔵庫」という説明は不適切。 |
| 2 ★ | 交換前に手を消毒 | ◯ CVポートに接続する輸液の交換は、カテーテル関連血流感染(CRBSI)のリスクを伴う操作。交換前の手指消毒は最も基本的かつ重要な感染対策であり、家族が行う在宅ケアにおいても必須の指導内容。 |
| 3 | 処方2(脂肪乳剤)を輸液フィルター通して投与 | × 脂肪乳剤は輸液フィルターを通してはならない。輸液フィルターの孔径(多くは0.2 µm程度)は脂肪粒子(約0.2〜0.5 µm)を捕捉・除去してしまうため、フィルターを通すと脂肪成分が投与できなくなる。脂肪乳剤はフィルターを介さずに、またはフィルターより下流(患者側)から投与する。 |
| 4 ★ | 入浴時はフーバー針をはずす | ◯ CVポート自体は皮下に完全に埋め込まれているため、フーバー針を抜針すれば入浴(シャワー・入浴)が可能。針を留置したまま入浴すると、穿刺部位からの感染リスクが高まる。入浴前に抜針し、入浴後に必要に応じて再穿刺する。 |
| 5 | フーバー針を家庭系一般廃棄物として処理 | × 使用済みのフーバー針は鋭利な医療廃棄物であり、針刺し事故・感染性廃棄物としての適切な処理が必要。家庭系一般廃棄物として地域のルールに従って処分するのは不適切で、訪問看護師・薬剤師等が回収するか、専用の廃棄容器・回収ルートを利用する。 |
・選択肢3:「輸液フィルター=安全」という思い込みに注意。脂肪乳剤はフィルターを通さないのが原則であり、フィルターの目的(微粒子・気泡除去)と脂肪粒子のサイズの関係を理解しているかが問われる。
・選択肢5:「使用済み針=鋭利物(感染性廃棄物)」という基本認識があれば誤りと判断できる。在宅医療における医療廃棄物は一般廃棄物と区別する。
【問323】介護保険制度の基本と医療保険との切り分け
| 選択肢 | 記述 | 判定・解説 |
|---|---|---|
| 1 | 利用開始に伴い保険料が増額 | × 介護保険の保険料は40歳以上の被保険者が年齢・所得等に応じて納付するものであり、サービスの利用を開始したこと自体によって保険料が増額されることはない。利用開始(要介護認定)と保険料の額は直接連動しない。 |
| 2 | 給付の1ヶ月上限額が年齢で区分 | × 介護保険から給付される1ヶ月あたりのサービス利用の支給限度額は「要介護度(要介護1〜5、要支援1・2等)」によって区分される。「年齢によって区分」という記述は誤り。 |
| 3 ★ | 自己負担割合は所得に応じて異なる | ◯ 介護保険サービスの利用者負担は原則1割だが、一定以上の所得がある第1号被保険者は2割または3割となる。所得に応じて自己負担割合が変動する仕組みは正しい。 |
| 4 ★ | 在宅服薬指導の費用は介護保険適用 | ◯ 要介護認定を受けている患者に対する薬局薬剤師の訪問サービスは「居宅療養管理指導」として介護保険から給付される(要介護認定を受けていない場合は医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導料」)。本症例は介護保険認定済みのため、服薬指導等の費用は介護保険が適用される。 |
| 5 | 薬剤料は介護保険適用 | × 薬剤そのものの費用(薬剤料)は医療保険から給付される。介護保険が適用されるのは「居宅療養管理指導」等のサービス・指導に係る費用であり、薬剤費そのものは対象外。「サービス=介護保険」「薬剤費=医療保険」という切り分けが本問の核心。 |
・選択肢2:介護保険の支給限度額の基準は「要介護度」であり、「年齢」ではない。年齢で区分されるのは被保険者の分類(第1号・第2号被保険者)であり、給付の上限額とは別の話。
・選択肢4・5:「居宅療養管理指導(サービス部分)=介護保険」「薬剤料(モノの費用)=医療保険」というサービスとモノの切り分けが最大のポイント。選択肢4を正、選択肢5を誤と判断できるかが問われる。


輸液フィルターと脂肪乳剤の関係:輸液フィルターは細菌・微粒子・気泡を除去する目的で使用されますが、脂肪乳剤の脂肪粒子(約0.4〜0.5 µm程度)は一般的なフィルター孔径(0.2 µm)より大きいか同程度のため、フィルターを通すと目詰まりや脂肪成分の損失が起こります。複数ルートで投与する際は「脂肪乳剤はフィルターを介さない別ルートから」「ワイ字管などでフィルター下流に接続」といった工夫が必要です。
CVポート・フーバー針の入浴管理:CVポートは完全皮下埋込型のため、針を抜けば防水テープ等で保護し入浴可能です。逆に針を刺したまま入浴すると、留置部位から感染するリスクが高まります。「ポート=埋め込み、針=着脱可能」という構造のイメージを患者・家族と共有すると理解しやすくなります。
「居宅療養管理指導」と「在宅患者訪問薬剤管理指導料」:どちらも薬剤師が患家を訪問して服薬指導等を行うものですが、要介護・要支援認定を受けている方は介護保険(居宅療養管理指導)、認定を受けていない方は医療保険(在宅患者訪問薬剤管理指導料)が適用されます。「認定の有無」で適用される保険制度が切り替わる点を押さえておきましょう。












