グラム陽性菌やグラム陰性菌など種類が多くてなかなか覚えられない…
この記事はこんな悩みを持った薬学生や医療学生向けです。
こんにちは。薬剤師のあおい(@yaku_medical)です!
- 原核生物と真核生物の違い
- 細菌の分類について
- グラム染色の手順
- 実際の顕微鏡図
グラム染色の手順から細菌の分類方法・覚え方グラム染色の手順から細菌の分類までを徹底解説!
原核生物と真核生物の違い
原核生物 | 真核生物 | |
核 |
|
|
染色体外DNA | プラスミド | ミトコンドリアや葉緑体の独自DNA |
細胞膜 | ステロール類を含まない脂質二重層からなる。 ※例外として、マイコプラズマは人工培地で増殖できる最小の細菌として知られていますが細胞膜はコレステロールからなる。 | ステロール類を含む脂質二重層からなる。 動物→コレステロール 植物→エルゴステロール |
細胞骨格 | なし | あり(微小管など) |
細胞壁 | ペプチドグリカン ※例外として、マイコプラズマは細胞壁をもたない(β-ラクタム系抗生物質は無効) | 植物:セルロース、ペクチン、リグニン 真菌:β-グルカン、キチン 動物、原虫:なし |
リボソーム | 70S(30S+50S) | 80S(40S+60S) |
<細胞内小器官> ・ミトコンドリア ・小胞体 ・ゴルジ体 ・リソソーム ・ペルオキシソーム | なし | あり |
例 | 真正細菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌など)、藍藻類(シアノバクテリア)、古細菌(メタン菌、高度好塩菌、超高熱菌など) | 動物、植物、菌類(カビ類)、原生生物(アメーバ、ゾウリムシ、ミドリムシなど) |
表のように、細菌は原核生物に分類されています。
また、ウイルスは「生物」ではないため、原核生物にも真核生物にも当てはまりません。
細菌の分類について
細菌はグラム染色により、「紫色」に染色されるグラム陽性菌と、「赤色」に染色されるグラム陰性
菌に大きく分けられる。
グラム染色の手順
すべての細菌を青または青紫色に染色する。
クリスタルバイオレットとヨウ素の複合体が形成され、色を定着させる。
細胞壁の構成成分であるペプチドグリカン層が薄いグラム陰性菌だけを脱色させる。一方、グラム陽性菌はペプチドグリカン層が厚いため、脱色されません。
グラム陽性菌は脱色されていないので青紫色のままに、グラム陰性菌は赤色に染まります。
グラム陽性菌について
<芽胞形成菌>
属名 | 菌名 |
バシラス属 | セレウス菌、炭疽菌 etc… |
クロストリジウム属 | 破傷風菌、ディフィシル菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌 etc… |
表の中で挙げた芽胞形成菌はすべて「グラム陽性桿菌」になります。
<グラム陽性球菌>
菌種 | 菌名 |
グラム陽性球菌 | 黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、肺炎レンサ球菌 etc… |
「~球菌」とつけば大体「グラム陽性球菌」です。
<グラム陽性桿菌>
菌種 | 菌名 |
グラム陽性桿菌 | セレウス菌、炭疽菌、破傷風菌、ディフィシル菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌 →「芽胞形成菌」 ジフテリア菌、ビフィズス菌、結核菌 ※結核菌は抗酸菌といって染まりが悪いため、加熱した場合陽性にそまります。一般的には抗酸菌染色(Ziehl-Neelsen染色)という特殊な染色法が用いられます。 |
グラム陰性菌について
<グラム陰性球菌>
属名 | 菌名 |
ナイセリア属 | 淋菌、髄膜炎菌 |
<グラム陰性桿菌>
菌種 | 菌名 |
グラム陰性桿菌 | 大腸菌、百日咳菌、緑膿菌、ビブリオ族(コレラ菌、腸炎ビブリオ)、赤痢菌、インフルエンザ菌、サルモネラ族、レジオネラ族など |
<らせん菌>
菌種 | 菌名 |
らせん菌 | カンピロバクター族、ヘリコバクター族、トレポネーマ属 etc… |
グラム陰性菌に関しては、よく出てくるものから覚えていけばOKです。グラム陽性菌を優先的に覚えていけば、覚えていないものはグラム陰性菌としてしまう方法でも大体の問題は解けてしまいます。
実際の顕微鏡図
グラム陽性球菌の代表例として、Staphylococcus aureus〔黄色ブドウ球菌〕がよく出題されますので確認しておきましょう。
グラム陰性桿菌の代表例として、Escherichia coli〔大腸菌〕がよく出題されますので確認しておきましょう。
関連問題
薬剤師国家試験のグラム染色の問題としては第104回 問117で出題されていますので、まだ解いたことのない方はぜひ解いてみましょう!
図1は一般的なグラム染色の手順①〜④とそれによるA菌及びB菌の染色結果を示している。また、図2は別の2種類の菌のグラム染色の結果である。グラム染色及びその結果に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 .グラム染色に用いる試薬は、①がルゴール液、②がクリスタルバイオレット溶液、③がエタノール、④がサフラニン溶液である。
2 .④では、A菌は濃いピンク色に、B菌は青紫色に染色される。
3 .A菌はグラム陽性菌であり、B菌はグラム陰性菌である。
4 .黄色ブドウ球菌のグラム染色の結果は、図2のアのようになる。
5 .芽胞を形成している菌をグラム染色すると、図2のイのように内部の一部が染色されにくいことがある。
【解説】
1.×
グラム染色に用いる試薬は、①がクリスタルバイオレット溶液、②がルゴール液(ヨウ素−ヨウ化カリウム液)、③がエタノール、④がサフラニン溶液(又はフクシン溶液)である。(104回問 117出題)
2.×
④では、A菌は青紫色に、B菌は濃いピンク色に染色される。(104回問 117出題)
3.〇
操作手順③より、A菌はグラム陽性菌、B菌はグラム陰性菌と推察できる。(104回問 117出題)
4.×
黄色ブドウ球菌はグラム陽性球菌であるため、形は「球形」、グラム染色の結果は「青紫色(この図では濃い灰色)」となるはずであり、染色結果の色が異なる。(104回問 117出題)
5.〇
芽胞とは、一部の細菌が増殖に適さない環境になった時に形成する耐久性の高い細胞構造のことであり、芽胞形成部分は、染色されにくい。そのため、芽胞を形成している菌をグラム染色すると、図2のイのように内部の一部が染色されにくいことがある。(104回問 117出題)
最後に
今回は、グラム染色の手順やグラム陽性菌・グラム陰性菌の覚え方について解説させて頂きました。
どの菌がグラム陽性菌か、グラム陰性菌かは、数も多くなかなか覚えにくい部分だったりしますので参考になりましたら、幸いです。
薬剤師国家試験で使えるゴロも紹介しています。
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