第110回
問175
理論問題|薬剤
平均滞留時間(MRT)の計算
問175(理論)
体内動態が線形1-コンパートメントモデルに従い、生物学的半減期が1.4時間である薬物を、3種類の剤形で同用量を経口投与したとき、下表に示す血中濃度時間曲線下面積(AUC)と一次モーメント時間曲線下面積(AUMC)が得られた。この結果に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
ただし、絶対的バイオアベイラビリティはいずれも100%とし、ln 2 = 0.693とする。
ただし、絶対的バイオアベイラビリティはいずれも100%とし、ln 2 = 0.693とする。
| 剤形 | AUC(mg・h/L) | AUMC(mg・h2/L) |
| 経口液剤 | 2.0 | 6.0 |
| 散剤 | 9.0 | |
| 錠剤 | 10 |
1
最高血中濃度が最も大きいのは経口液剤である。
—
2
投与量を増やすと平均滞留時間は長くなる。
—
3
経口液剤を経口投与したときの平均吸収時間は約1.0 hである。
—
4
散剤の平均溶出時間は約0.5 hである。
—
5
錠剤の平均崩壊時間は約1.5 hである。
—
正解です!
解説で計算過程を確認しましょう。
不正解です。正解は 1、3 です。
解説で計算過程を確認しましょう。
解説を見る▼
平均滞留時間(MRT)はAUMC/AUCで算出でき、経口投与時のMRTは「静注時のMRT(体内動態そのものにかかる時間)」と「剤形由来の吸収・溶出過程にかかる時間」に分解できます。この分解のロジックを正確に立式することがポイントです。
計算の骨組み
① 消失速度定数 ke = ln2 ÷ t1/2 = 0.693 ÷ 1.4 ≒ 0.495 h-1
② 静注時のMRT(1-コンパートメントモデル)= 1/ke ≒ 1/0.495 ≒ 2.0 h
③ 各剤形のMRT(経口)= AUMC ÷ AUC で算出
④ 経口液剤は溶出過程を経ないため、MRT経口液剤 = MRT静注 + 平均吸収時間(MAT)
⑤ 散剤・錠剤は溶出過程を経るため、MRT固形剤 = MRT静注 + 平均溶出時間(MDT)+ MAT(吸収過程は剤形によらず共通と仮定)
① 消失速度定数 ke = ln2 ÷ t1/2 = 0.693 ÷ 1.4 ≒ 0.495 h-1
② 静注時のMRT(1-コンパートメントモデル)= 1/ke ≒ 1/0.495 ≒ 2.0 h
③ 各剤形のMRT(経口)= AUMC ÷ AUC で算出
④ 経口液剤は溶出過程を経ないため、MRT経口液剤 = MRT静注 + 平均吸収時間(MAT)
⑤ 散剤・錠剤は溶出過程を経るため、MRT固形剤 = MRT静注 + 平均溶出時間(MDT)+ MAT(吸収過程は剤形によらず共通と仮定)
各剤形のMRTの計算
MRT経口液剤 = AUMC÷AUC = 6.0÷2.0 = 3.0 h
MRT散剤 = 9.0÷2.0 = 4.5 h
MRT錠剤 = 10÷2.0 = 5.0 h
平均吸収時間(MAT)の算出
MAT = MRT経口液剤 - MRT静注 = 3.0 - 2.0 = 1.0 h(選択肢3と一致)
各剤形の平均溶出時間(MDT)の算出
MDT散剤 = MRT散剤 - MRT静注 - MAT = 4.5 - 2.0 - 1.0 = 1.5 h
MDT錠剤 = MRT錠剤 - MRT静注 - MAT = 5.0 - 2.0 - 1.0 = 2.0 h
MRT経口液剤 = AUMC÷AUC = 6.0÷2.0 = 3.0 h
MRT散剤 = 9.0÷2.0 = 4.5 h
MRT錠剤 = 10÷2.0 = 5.0 h
平均吸収時間(MAT)の算出
MAT = MRT経口液剤 - MRT静注 = 3.0 - 2.0 = 1.0 h(選択肢3と一致)
各剤形の平均溶出時間(MDT)の算出
MDT散剤 = MRT散剤 - MRT静注 - MAT = 4.5 - 2.0 - 1.0 = 1.5 h
MDT錠剤 = MRT錠剤 - MRT静注 - MAT = 5.0 - 2.0 - 1.0 = 2.0 h
各選択肢の解説
◯ 1 3剤形ともAUC(曝露量)は等しいが、MRTが最も短い経口液剤は吸収が最も速く、同じAUCの下ではCmaxが最も高くなると考えられる
× 2 線形1-コンパートメントモデルでは、投与量が変化してもAUC・AUMCは比例して変化するため、MRT(=AUMC/AUC)は投与量によらず一定である
◯ 3 経口液剤の平均吸収時間は1.0 hと算出され、記述と一致する
× 4 散剤の平均溶出時間は1.5 hであり、0.5 hという記述は誤り
× 5 錠剤の平均崩壊(溶出)時間は2.0 hであり、1.5 hという記述は誤り(1.5 hは散剤の値であり、選択肢4・5で値が入れ替わっている)
◯ 1 3剤形ともAUC(曝露量)は等しいが、MRTが最も短い経口液剤は吸収が最も速く、同じAUCの下ではCmaxが最も高くなると考えられる
× 2 線形1-コンパートメントモデルでは、投与量が変化してもAUC・AUMCは比例して変化するため、MRT(=AUMC/AUC)は投与量によらず一定である
◯ 3 経口液剤の平均吸収時間は1.0 hと算出され、記述と一致する
× 4 散剤の平均溶出時間は1.5 hであり、0.5 hという記述は誤り
× 5 錠剤の平均崩壊(溶出)時間は2.0 hであり、1.5 hという記述は誤り(1.5 hは散剤の値であり、選択肢4・5で値が入れ替わっている)
引っかけポイント:
・選択肢2:投与量とMRTの関係は、線形(用量非依存性)体内動態の基本原則を問う定番のひっかけ。AUC・AUMCがともに投与量に比例するため、その比であるMRTは不変である
・選択肢4・5:散剤の正しい値(1.5 h)と錠剤の正しい値(2.0 h)が意図的に入れ替えられ、それぞれ「0.5 h」「1.5 h」という別の数値にすり替えられている。剤形ごとの計算を最後まで丁寧に行わないと引っかかりやすい
・選択肢2:投与量とMRTの関係は、線形(用量非依存性)体内動態の基本原則を問う定番のひっかけ。AUC・AUMCがともに投与量に比例するため、その比であるMRTは不変である
・選択肢4・5:散剤の正しい値(1.5 h)と錠剤の正しい値(2.0 h)が意図的に入れ替えられ、それぞれ「0.5 h」「1.5 h」という別の数値にすり替えられている。剤形ごとの計算を最後まで丁寧に行わないと引っかかりやすい
臨床メモ▼


薬剤師 あおい
MRT(平均滞留時間)は、統計モーメント理論に基づく薬物動態パラメータで、薬物分子が体内に留まる平均時間を表します。剤形による吸収・溶出速度の違いを定量的に評価できるため、ジェネリック医薬品の生物学的同等性評価などでも重要な考え方です。
実務では、同じ有効成分でも剤形によってTmax(最高血中濃度到達時間)やCmaxが異なることがあり、特に速効性が求められる場面(頓服の鎮痛薬など)では、溶出の速い剤形(液剤・OD錠など)が選択されることがあります。剤形変更時はこうした吸収特性の違いも考慮しましょう。










